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やさしい日本語(アルファサード)

(本記事は朝日新聞テックフェス2024のテクノロジーショーケース第1部の採録です。当日の様子はこちら↓からご覧いただけます)

森崎と申します。「やさしい日本語」とは何か、アルファサードはどんな会社か、私自身が何者かというお話をさせていただきます。先に結論を言うと、「私たちがテクノロジーでウェブを良くしていく!」これが今日伝えたいことです。私たち、というのは朝日新聞グループのみならず皆さんも含めて、そういう気持ちに少しでもなってもらえたらと思います。

私は現在アルファサードの社長ですが、朝日インタラクティブの社長も務めています。朝日新聞社から見ると朝日インタラクティブは子会社であり、アルファサードはその子会社という関係です。
2001年に朝日新聞社の技術部門に入社しました。ネットワークエンジニアとしてCiscoのCCNAの資格を取り、その後朝デジCMSの構築をして、もう技術はやり切ったというところで希望してビジネス部門に異動しました。新聞社にはいろいろな職種があり、朝日新聞社は結構本人の希望を聞いてくれます。2014年に異動してウェブメディアの受託開発を営業から提案、PM、UI/UXまで1人で担当しました。2014年から2019年まではビジネス部門のアライアンス事業部の部長として、事業開発や「バーチャル高校野球」の事業拡大をしました。2022年に子会社の朝日インタラクティブに出向して代表取締役になり、今年はアルファサードをM&Aしてアルファサードの代表取締役社長にもなりました。

アルファサードのミッションは「Improve the Web.」
日本語では「テクノロジーでウェブを良くし、すべての人に優しいデジタル社会の実現に貢献する」です。アルファサードは20年間テクノロジー会社としてウェブアクセシビリティをやってきました。20年前の当時はウェブアクセシビリティといっても認知されていませんでしたが、徐々に最近、やらないといけないという風潮になってきたと感じています。

アルファサードには製品とサービスがあります。「PowerCMS」と「伝えるウェブ」です。「PowerCMS」はコンテンツマネジメントシステムで、メディアでは残念ながら今まであまり使われておらず、特に官公庁などで使われてきました。「PowerCMS」はMovable Typeをベースにしており、言語はPerlで、3000件以上使われているCMSです。最近開発した「PowerCMS X」は完全に新しく開発し、言語はPHP、特徴として官公庁のニーズに対応しています。また「やさしい日本語」のノウハウはすべて「PowerCMS X」にパッケージ化されています。競合との違いは、安価で高機能、安心の国産CMSで、アクセシビリティに強いというところです。

もう1つ「伝えるウェブ」という製品があります。「PowerCMS X」の「やさしい日本語」の機能を切り出したものです。この製品を導入すればどんなサイトでもやさしい日本語化することができます。

やさしい日本語とは何か、少し細かく説明していきます。1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。この時に何が起きたかというと、外国人の死亡率が日本人よりも高かったということです。災害情報や避難情報が伝わらなかったことが大きな原因でした。この経験から、簡単な日本語で情報を発信しようという動きが始まりました。

やさしい日本語化とはどうすることかというと、単語の区切りを分かち書きして漢字にふりがなを付ける、ことです。例えば「高台へ避難しましょう」をやさしい日本語にすると「たかところへ げてください」となります。「高台」や「避難」は言葉として難しく、「しましょう」も伝わりにくいので、はっきりと意味が伝わる言葉に変換します。さらに単語と単語を区切り、ふりがなを振ることで、外国人にも理解しやすくなります。

このようなやさしい日本語化を自動でできるのが「伝えるウェブ」です。形態素解析と辞書登録の2つの手法を使っています。今では何万語も登録されている辞書を使って実現しています。

朝日新聞社のコーポレートサイトにも「伝えるウェブ」を導入しました。ボタンを押すだけでやさしい日本語になります。

「伝えるウェブ」の特徴として、ルビ入りの文章を画像化してSNSに投稿する機能やSEO対策があります。ルビが振られているテキストでもSEOに影響が出ないように設計されています。この製品はグッドデザイン賞も受賞しました。

アルファサードが朝日新聞グループに入った理由は、朝日新聞社のパーパスとアルファサードのミッションが非常に一致していたからです。特に「ひとりひとりが希望を持てる未来をめざして」という点が一致し、当時のアルファサード社長・野田も賛同してくれました。

今後ウェブを良くするためにどうしていきたいかについて、日本在住の外国人や学習障がい者への対応を進めていきたいと思います。公立学校の外国人児童・生徒はどんどん増えています。弊社の「伝えるウェブ」担当者は元国語教諭で、外国人の生徒にふりがなを振って教えていたという実体験から「伝えるウェブ」をもっと広めようとしています。またルビがないと文章が理解できないという学習障がいの方もいます。今年4月に法律によって合理的配慮の提供が義務化されました。しかしながらWebメディア全体ではまだこういった対応をしているところは少ないです。

また視覚障がい者や聴覚障がい者への対応も進めていきたいと思います。例えば、朝日新聞デジタルのアメリカ大統領選に関する図ですが、政党を赤と青で色分けしているものが、色覚異常の方には区別がつきにくいことがあります。印をつけるなど、色以外でも区別ができる工夫はしていますが、こういったことをもっとやらなければなりません。朝日新聞デジタルに限らずウェブメディア全体がアクセシビリティに対応していくようになるといいと思っています。

最後に、私たちがテクノロジーでウェブを良くしていくことを皆さんと一緒に実現したいと思います。