テクノロジーが結ぶ、3つのつながり(社外CTO・広木大地)
(本記事は朝日新聞テックフェス2024のキーノートスピーチの採録です。当日の様子はこちら↓からご覧いただけます)
皆さんこんにちは。広木です。
本日はキーノートセッションといたしまして、テクノロジーが結ぶ3つのつながりというお話をさせていただきたいと思います。
私たちのパーパスをまずご説明させて頂いて、そこと今回お話しいただける様々なテーマがどのように関係しているのか、そして僕らがテクノロジーと新聞社というメディアのあり方をどのように考えてるかについてお話できればと思います。
私の自己紹介から始めさせてください。広木大地と申します。今回、朝日新聞社の社外CTOとしてこのテックフェスの発起人を務めております。様々な会社の中でテクノロジーと経営の間にある問題を解決していき、もっと日本が元気な社会になる、こういうことを目指して日々活動しております。
私たち朝日新聞社のパーパスは、「つながれば、見えてくる」です。
「ひと、想い、情報に光をあて、結ぶ。ひとりひとりが希望を持てる未来をめざして。」これが私たちのパーパス、つまり存在している目的です。この私たちのパーパスというものはテクノロジーを使ってもっと実現できるのではないか、そういう風に考えて、今回の様々なテーマについてニュースメディアの裏側としてどのようにテクノロジーを活用しているのか、また朝日新聞社がどのようなアプローチを試みてきているのかということについていろいろとご紹介させていただく場とできればと思っております。
この「つながれば、見えてくる」というのは、私たちは人々をつないで、新しい視点を提供していったり、それがテクノロジーを使うことで、これを簡単にすることができると思っています。そして、ひと、想い、情報、多様な要素をつなぎ合わせて、社会に新しい価値を創造できるのではないかと思っています。一人ひとりが希望を持てる未来、これがまさにその結果として私たちが社会に届けていきたい価値そのものなので、これを実現するために技術、新しいテクノロジーは確実に役に立つものだと捉えて、私たち朝日新聞社のテクノロジー部門は日々いろいろな施策を繰り広げています。
この情報を巡る様々な現代社会には課題があると思っています。
まさにつながることが少なくなってしまった。そして見えてこないこの部分というのが私たちの現代社会の大きな課題だと思っています。SNS等のエコーチェンバーのような減少によって、意見の対立ということがどんどんタコツボ化してしまったり、情報がとても多くなる社会の中で、正しい情報や信頼性がある情報にどうやったらたどりつけるのか、さらに、多くの人々が求めているニーズは多様化していく中で、どうしたら価値ある情報を届けられるのか。私たちとテクノロジーで人に光を当ててつなぐ、テクノロージーで想いに光を当ててつなぐ、テクノロジーで情報に光を当ててつなぐ、この3つがまさに私たちの技術的な価値を生み出す戦略だと考えています。
今回テクノロジーショーケースでご紹介するものの中には、それぞれ「つなぐ」というキーワードで説明できるような多くの施策が含まれています。
「ひとをつなぐ」というところでは、やさしい日本語プロジェクトをご紹介させて頂きます。朝日新聞グループにジョインしたアルファサード株式会社で提供させて頂いている、「やさしい日本語」というのは、第二言語として日本語を話す話者や、海外の方にとって、分かりやすい、読みやすい、理解しやすい日本語に変換するというサービスです。これによって緊急時やあるいは公式な情報に対してのアクセシビリティが上がる、ということを森崎さんからご紹介していただきます。
「ひとをつなぐ」という観点では、朝日新聞デジタルのリニューアルプロジェクトもご紹介させて頂きます。今まさに新しいニュースメディアのあり方を目指して、リニューアル進行中ではありますが、その中で段階的にいくつか機能をリリースしています。記者とのつながりを実現する機能、この背景にある想いや、どんな環境でこのプロジェクトが進んでいるか、その思いを包PMからご紹介させていただきます。
「想いをつなぐ」というテーマで、AI短歌のプロジェクトがご紹介できると思います。まさに文化と自然言語処理というAIの基本技術の交差点となる部分、想いを伝える手段としての短歌や、その背後にある深い世界というものをAIはどのように読み解いていくのか、人間に出来ること、そしてAIに出来ることの交差点というものを浦川さんからご紹介いただきます。
次に「情報をつなぐ」という観点です。データジャーナリズムの活動についてご紹介させていただきます。データジャーナリズムというのは、大量のデータの分析や可視化を通じて、新しい調査報道のあり方、見せ方、お客様への届け方というものを模索しているものです。その中でも「みえない交差点」という交通事故を生み出してしまうようなみえない交差点を見える化する試みの紹介をさせていただきたいなと思っています。技術とジャーナリズムの新しい融合のかたちを山崎さんからお伝えできればと思います。
「情報をつなぐ」という観点で、校正支援SaaS Typoless(タイポレス)もご紹介させていただきます。朝日新聞社初のSaaS型のサービスとなっているこのTypolessは独自AIによる自動的な構成そして良文サポート、炎上リスク検知など様々な機能を持っています。またAPI連携もあり、さまざまな記事編集ツール、文書作成ツールと融合ができます。マネジメントから実装までも手掛ける倉井さんからお伝えできればと思っています。
またこの後、ひと、想い、情報、これら全てをつないでいくというテーマでパネルディスカッションをさせていただきます。ニュースメディア企業のスマートニュースさんや、日本経済新聞社さん、そしてストリーツ株式会社のAIニュースを担当している田島さんなどにご参加いただきまして、生成AIとニュースメディアのあり方について、この後議論できればと思っています。
また、朝日新聞社のことだけをフォーカスして繋げていくわけではなくて、さらに広い範囲でニュースメディアとテクノロジーのあり方について皆さんと考えていく場所にしたいので、日本経済新聞社の皆さまにもLTをしていただき、また私たちを手伝ってくれているレバテック株式会社やファインディー株式会社のパートナーと連携した施策についてもご紹介させていただきます。まさに人を想い、情報をつないでいくというのが私たちの今回のコンセプトです。
そんな私たちの考える、そして私の考えるテクノロジーの本質というものは、ひとりひとりの希望のためにあるもの、であると考えています。テクノロジーは人を幸せにする道具にしなければいけないし、そのように使っていこうと思っています。また情報技術を含めたテクノロジ―はつながりをもっと生み出してくれるものだと思っています。人々が分かれていってしまうのを防ぎ、どんどん統合し、そして自分たちならではの視点を見い出し、新たな価値を生み出す。これがテクノロジーのもたらせる力だと思っています。そして事実をクリアにすることと、新しい視点をもたらすものだとも考えています。この3つの本質的な活用をしていくことが私たちのミッションです。
私たちのビジョンとして、パーパスの次に掲げたものがどのような価値観を持っていくべきかというものです。「クリア」明瞭であること、「チャレンジ」挑戦すること、「コミュニティ」共創、共に創っていくこと、そして「サステナビリティ」循環をすること。私たちはこのともに創る、皆さんとともに創るつながりの未来というものを一緒に議論できればと思っています。
本日ご紹介するプロジェクトは、透明性や信頼を基盤に、テクノロジーの力で混沌とした情報社会をクリアにしようとする、私たちの挑戦の一つです。この挑戦は私たちだけでは成し遂げられるものではないと思っています。
それぞれの違いを認めて安心してつながれる場所で皆さまと、ともに考えてともに創ることで大きな可能性が見えてくると、そう思っています。テクノロジーは個人や企業の持つ利他の想いをつないで、社会課題の解決に向けた新しい循環を生み出す力となります。私たちは皆さまひとりひとりの挑戦を支えて、困難を乗り越える選択肢を提供できるようにしたいと思っています。
各セッションでの対話を通じて、より良い未来への第一歩を共に踏み出していきましょう。